藤沢医院

藤沢医院通信blog

インフルエンザワクチン

 今回は、新型コロナウイルス感染症の現在の話題について書きます。

まず第一は“ワクチン”です。皆さんはインフルエンザワクチンを打ちましたか?インフルエンザワクチンは、その効果がおおよそ60%ほどと言われています。毎年流行するであろう種類を予測して製造しているのですが、ウイルスの毒性や発病力を無くしてつくった不活化ワクチンと呼ばれるものです。その効果が現れるのは接種から2週間後で、効果の持続期間は4~5か月と言われています。

 今製薬会社が休みなく製造しているのが新型コロナウイルスのワクチンですが、先日アメリカのファイザー社が製造しているワクチンは90%以上の効果ありとの中間報告が発表され、12月初旬にはイギリスとアメリカが接種を開始する方向で動いています。このワクチンは遺伝子ワクチンと呼ばれ、ウイルスの表面に存在する遺伝子を注射して私たちの体の中で“抗体”と呼ばれる武器をつくるのです。問題点はワクチンが不安定なためにマイナス70℃で輸送して冷凍保存しないといけないこと、また菅総理は「国民全体が接種できるように」とおっしゃっていますが、これを実現して多数の国民に打つために各自治体はいつどこで行うか頭を悩ませています。つまり、インフルエンザワクチンの接種と同じように近くのクリニックで打てない可能性が十分あるのです。オリンピックの開催国として来年の前半には接種を済ませたいわけですが、何種類かあるワクチンを誰にどのように振り分けるのかなど決まっていないことが多く、課題は山積しています。

 次に医者からみて大事なのが、“重症者数の増加”です。例えば現時点で愛知県の重症者のベッドの占拠率は43%ほどですが、「なーんだ、半分以上空いているじゃない」と皆さんは思われるかもしれません。しかし、現実はひっ迫しているのです。病院は国から新型コロナウイルス患者のためのベッドを増やすように言われてギリギリのベッド数を提示しているのですが、実際には全部のベッドが埋まった状態で医師と看護師を担当させられる病院はほとんどないのです。皆さんに考えてほしいのですが、大きな病院は手術や抗がん剤などの特別な治療を行わないといけません。例えば私は外科医ですが、胃がんや乳がんの手術をしながら新型コロナウイルス感染症の患者さんを担当することはできません。なぜなら万が一私が感染した場合、担当患者さんに感染してしまう可能性があるだけでなく、予定されていたがん患者さんの手術が延期になってしまうのです。したがってコロナウイルス感染症を担当する医師や看護師は、人数が限られてくるのです。しかし、彼らにも当然家族や恋人がいます。コロナウイルスと毎日闘っている中で「自分が感染しているかもしれない」と思うと、家に帰ることもできず病院の宿舎やホテルで寝泊まりする人もいます。これが何か月も続いたらどうなるでしょう?今、コロナウイルスに関わる医師・看護師の70%以上がストレスを感じ、50%以上が中等度以上のうつ状態と診断されています。海外で実際に起こったように、「どちらの患者を助けて、どちらの患者を見捨てる?」などという事態は絶対に避けなければいけないのです。

 第3波が早く終息することを祈るばかりです。

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