藤沢医院

藤沢医院通信blog

加齢と臓器

 今回は「加齢と臓器」について書きます。

私たち人間の細胞は、限られた回数しか分裂・増殖することができず、ヒトの体細胞は約50回の分裂が可能と言われています。最終的に細胞の分裂は停止して増殖できなくなり、その状態を「細胞老化」と言います。細胞老化は臓器の老化に繋がり、からだの老化に繋がっていきます。脳の神経や心臓の細胞は最初から分裂能を持たないため、細胞が壊れる(脳卒中や心筋梗塞など)ことによって老化していきます。例えば胃の老化では、胃壁細胞からの胃酸や主細胞からのペプシノーゲンの分泌が低下するため、消化不良(胃がもたれる、たくさん食べられない)などの症状が出てきます。

 多くの場合、老化の最初の徴候は筋骨格にあらわれます。皆さんもある年齢で「足の筋肉が衰えたな」と感じることがあったと思います。骨粗しょう症という病気を聞いたことがあると思いますが、これは骨の密度が低下してくる病気です。骨を支える細かい柱がどんどん細くなるために、骨が縮んで背も低くなっていきます。また、ちょっとした転倒で骨折しやすくなります。目、続いて耳は中年期の初期に変化し始めます。ほとんどの身体機能は30歳手前でピークに達し、その後徐々に衰えていくと言われています。

臓器は老化を続けても、たいていの機能は保たれます。それは各臓器が、からだが必要とする以上に余力があるからです。例えば、健康な肝臓を手術で半分切除したとしても、残りの半分で十分に機能することが可能です。しかも肝臓は再生能力があるため、ある程度の大きさまで復活します。私は肝臓を切る手術をするときに、そのことは必ず説明していました。また胃を手術で切除するときに、患者さんから「胃は切除しても、もとの大きさに戻るんですよね?」とよく聞かれましたが、残念ながら胃腸はもとの大きさには戻りません。

 概して50代になると味覚や嗅覚が衰え始めます。これは舌にある味蕾(みらい)の感受性が鈍くなることに関係しています。この変化は特に、甘味と塩味に影響を及ぼしています。

鼻の粘膜は薄くなって乾き、鼻の神経が変性するため嗅覚が低下します。この変化が強く現れた場合、食べ物が苦く感じられる傾向があり、味を薄く感じることもあります。

 皮膚はご存知の通り、薄くなって弾力が低下し、乾燥して細かいしわがよります。しかし、しわや肌荒れ、しみには長年にわたり日光にさらされたことが大きく影響しています。日光にさらされないようにしてきた人は、多くの場合同年代の人よりも若く見えるようです。

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