コロナウイルス第7波と当院の発熱外来
今回は、コロナウイルスの第7波と当院の発熱外来の現状についてお話します。岸田総理がひっ迫する発熱外来と保健所業務を考慮して、COVID-19感染者の全数報告を止めて、大幅に縮小すると発言されました。ただし、全国共通のやり方にすればいいと思うのですが、「各自治体の方針に任せる」と都道府県に投げたことには大きな疑問を感じます。大村知事は、今後どうするかドクターと相談して決めると話しておられましたが、末端のドクターの意見を聞いてくれるのであれば、『頑張って発熱外来を続けるから、私の残業時間を少しでも短くしてください。』というのが本音です。
7月から8月にかけて、当院の発熱外来では毎日10〜20人以上のCOVID-19感染者を診察してきました。診察終了後の夜間に、私は陽性者の個人情報をその日のうちにパソコンに入力して半田保健所に報告する、これが岸田総理の言う“感染者の全数把握”なのです。私が入力しなければ、保健所と患者さんのやり取りが開始されません。したがって、遅滞も入力間違いも許されないのです。とても眠いのに・・・・。しかしながら現場の実状として、医療機関を受診できなくて自宅でおとなしくしている方が沢山いるのです。これは、当院にかかってくる発熱患者さんの電話からわかります。
実は当院の事務員は、毎日受診者の2〜4倍の患者さんを“お断り”しているのです。多い日は、1日で50件以上の発熱外来の依頼電話がかかりました。全員診察するとなると、かかりつけの患者さんは全く診察できなくなってしまいます。発熱外来を設置しているクリニックが限られているため、何件も電話して受診先が見つからずにそのまま様子をみる人が、毎日何万人もいるのです。実際に当院では、午前10時までには当日中の発熱外来が埋まってしまう状況で、それ以降の数十件の電話には「ごめんなさい。」とお断りするしかありませんでした。したがって“感染者の全数報告”は、もう意味をなしていないと思われます。青森県では医療機関でないところで陽性と判定された7,000人以上のデータが、報告漏れになっているとニュースに出ていました。これも、青森に限らずいろいろなところで“報告漏れ”が存在するのです。 さて、現在コロナウイルスの変異株であるBA.5が猛威を振るっています。今から100年以上前の通称“スペイン風邪”は、人類が最初に経験したインフルエンザですが、原因もわからないままに、それが終息するのに約3年を要しました。現代の医療と科学がこれだけ進歩した中で、3年を経過しても未だに終息の気配を見せないCOVID-19は、恐るべしと言わざるを得ません。
実体験で、過去において真夏にこれだけの発熱患者を診ることは、まったく経験したことがありませんでした。COVID-19の特徴は、次々に起こる“変異”に他なりません。COVID-19の変異とは、人間の細胞に入ってウイルスを増やすための変化です。アルファ株からオミクロン株への変化を見てみると、死亡率は低下しているのに感染力は上昇しています。人類が繰り出すワクチンや治療薬をすり抜けて、何とか共存するための変異を繰り返していると言えます。COVID-19が少なくとも季節性インフルエンザと同等にランク付けされるためには、より有効なワクチンと治療薬が必要になってきます。