抗生物質
今回は“抗生物質”について書きます。
皆さんは、抗生物質がどんな薬かご存知でしょうか?答えは「細菌をやっつける薬」です。
ここで、外来で患者さんからよく聞く言葉を列挙します。
- 風邪をひいたから抗生物質を一緒に出してください。
- 私はクラビットがよく効くから、これを出してください。
- 膀胱炎の症状はすぐによくなったから、抗生物質は2日で飲むのをやめました。
まず①は、本当によく言われます。大人の風邪の原因はほとんどがウイルスであるた
め、実際には抗生物質は必要ありません。お医者さんが抗生物質を処方するのは、単なる風邪ではなく細菌感染症と診断したか、風邪によるウイルスに細菌感染症が合併していると判断したときです。不必要に抗生物質を服用し続けると、本当に抗生物質が必要なときにこれが効かない“耐性菌”が身体の中でつくられることがあるので、注意が必要です。実際に何種類もの抗生物質が、耐性菌の出現により効きづらくなってきています。
次に②ですが、これは数日前に患者さんから言われた言葉です。私は患者さんにこう説明しました。「クラビットはとても強い抗生物質で、たくさんの細菌をやっつけることができます。身体の中で重症の感染症が起こっているときには、私もこれを処方します。しかし○○さんのように軽い症状のときから常にクラビットを飲み続けると、耐性菌が出現して、いざというときにこれが効かなくなります。お医者さんは、患者さんの症状やどこに感染症が起こっているのかを考えて、それに見合った抗生物質を処方しているので、ご自身からクラビットを出してくださいとは言わないほうがいいですよ。」
最後に③ですが、若年・中年女性は特に膀胱炎にかかりやすいため、当院にもよく受診されます。排尿時痛、頻尿、残尿感(混濁尿)が膀胱炎の三主徴ですが、「症状が消えたから次にかかったときのために抗生物質をやめて取っておこう!」は、やってはいけません。症状が消えたからといって細菌が消えたとは限らないからです。もしこれを続けていると、いざという時に抗生物質が効かなくなる可能性があるのです。私は細菌が消えるであろう日数を想定して抗生物質を処方していますから、必ず飲み切ってください。もちろん副作用が出た場合は、この限りではありませんので、再診察に来てください。