藤沢医院

藤沢医院通信blog

がん患者さんの尿

 今回はがん患者さんの尿のにおいをかぎ分ける生き物について書きます。まずは犬。

真っ黒なラブラドールレトリバーのエスパー(メス・8才)の前に置かれたのは数十人分の人間の尿検体。そのうちの1つにはがん患者の尿が入っている。順々ににおいを嗅いでいくエスパーが、ある尿の前で動きを止め、トレーナーを振り返った。「正解。それが、がん患者の尿です。」
エスパーは日本に5頭しかいない、においでがんを見つける「がん探知犬」の1頭。千葉県館山市にある「がん探知犬育成センター」で日々、冒頭のような訓練と、実際のがん検査に取り組んでいる。
探知犬のがん発見率は、なんと99.7%。それは犬が人間の100万~1億倍もの嗅覚を持つから可能である。しかし、どんな犬でもがん探知犬になれるわけではなく、狩猟犬として嗅覚が発達したラブラドールレトリバーの中でも、特に優秀な嗅覚と集中力を持つほんのひと握りの犬だけしかなれない。

続いては、線虫。体長は通常0.5~4ミリだが、数メートルになる種もある。土壌・水・海水などほとんどあらゆる場所に生息し、昆虫などの無脊椎(せきつい)動物、植物、人間を含む脊椎動物に寄生するものもいる(回虫、ギョウ虫など)。体長1ミリメートルほどの線虫はがん患者の尿に近づく性質があり、がんの早期診断への応用が期待されている。イヌと同等以上の嗅覚をもち、微量の物質でも検知できるという。安価に培養できるため、検査費用は1人あたり数千円ですむとのこと。共同研究では自動で大量に解析できる技術の開発を目指している。培養した線虫や患者の尿を自動で配置できる装置の開発が進められている。プレート上の線虫を撮影して動いた向きを解析し、がんの有無を判別できる技術も開発する。現在、膵臓(すいぞう)がんや大腸がんなどの患者で臨床研究を進めている。105人の患者で調べ、9割を超える精度でがんを見分けられたという。既存の検査では見つけにくいがんを早期のうちに検出できる可能性があると期待している。

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