訪問診療
今回は、“訪問診療”への思いについて、改めて書きたいと思います。皆さんは、“訪問診療”と“往診”が原則的に異なることをご存知でしょうか?皆さんがよく言う“往診”は、患者さんが急に家で体調が悪くなった時などに、ご家族あるいは患者さんの要請に応じて診察に伺うことを指します。“訪問診療”は、通院が不可能な患者さんの自宅に定期的に診察に伺うことを指します。当院に通院中の患者さんの中で、私から『通院できなくなったら、家に行きますよ。』と説明を受けた方が数多くいらっしゃると思いますが、これは私からの約束手形みたいなもので、私が病気にでもならない限り変わることはありません。
今でも、診療後の夜間にお伺いするとこがありますが、総じて『よくこんな時間に・・・』
と驚かれます。しかし、私にとって夜はとても気持ちが落ち着いた時間です。ご存知の方も多いと思いますが、私は単身赴任でここ(藤沢医院)に住んでおり、お酒も飲まないため、いつでも飛び出していくことが可能です。就寝中でも、嘱託医をしている老人ホームを中心に、呼び出しがかかることはよくあります。
私は、この“呼び出し”に関して、大学病院に勤務していたときにたくさん鍛えられました。
そう、私は外科医だったので、緊急手術が必要な患者さんが運ばれてきたときは、容赦なく呼び出されていたのです。1日の中で、一番怖い体験が始まるのです。それはなぜか?日中の定時手術の患者さんは、体調を整えて入院、食事を止めて胃腸が空っぽの状態で手術をします。自分の頭の中では、病変(癌のことが多い)の場所や大きさがわかっているので、手術前のシミュレーションはばっちりです。一方緊急手術の患者さんは、ほぼ初対面、持病や飲んでいる薬もわからない、多分ご飯は食べているから胃腸にご飯や便が詰まっている?状態です。ということは、胃や腸が破裂している場合は、すでに腹膜炎になっているわけです。
一緒に付いてこられる患者さんのご家族は、大学病院だからきっと助けてくれると必ず思っておられます。病院に向かう車の中で、私の心拍数はおそらく100を超えていたはずです。『どんな患者さんだろう?持病はあるんだろうか?』説明をしなくてもおわかりいただけると思いますが、術前検査もばっちりで体調も整えていただいた患者さんの定時手術と、普段の生活中に急激に発症した緊急手術の患者さんとでは、同じ手術をしたとしても、成功率は異なります。患者さんが、高齢者や持病をたくさん持っておられればなおさらです。前回書きましたが、“胃や十二指腸に穴が開いた”や“腸に穴が開いて、便が腸の外にあふれていた”などなど・・・。多いときは、このような緊急手術を週に2,3回行っていました。当然ながら、全て“助けなければいけない”と思って執刀してきました。
話を戻しますが、夜間に緊急手術で心臓がバクバクしながら病院に向かうのと、訪問診療
でご自宅に向かうのとでは、気持ちの落ち着きとやるべきことが格段に違うのです。
通常の訪問診療は、火曜日から金曜日の午後2時台に行っておりますが、その枠に収まらない場合は、平日の8時以降や土曜日の午後でもお伺いしております。
今でも頑張って、自分の足で通院してくださる患者さんがたくさんいます。私がかける声は、『いつでも、訪問診療に切り替えられるからね。』