新型コロナウイルス感染症4
今回も新型コロナウイルス感染症について書きます。
日々新しい情報が出てくるこの感染症ですが、愛知県は大都市圏の中でも新規感染者の増加が少なく、皆さんの“ステイホーム(家に居よう)”がとてもよく守られていることがわかります。特にこの知多半島では、感染者の急激な増加は現時点では認めておりません。私は毎日訪問診療で町内を車で移動していますが、外で遊んでいる子供もほとんど見かけません。大人ほど事情も呑み込めない彼らがこんなに頑張って家にいることに、私はとても感心しています。昨日受診された70代のかかりつけの女性が、「娘が働いているため、小学生の孫を2人預かっている。学校の課題があるから午前中に勉強の面倒をみるんだけど、主人と二人でてんやわんやです。」とお話されました。私は、「今のお年で2度目の子育てみたいですね。大変なこと、本当にご苦労様です。」と返しました。人間の体には、本来日中は陽光を浴びる、また夜は暗くして寝ることで保たれるホルモンバランスがあります。現時点で5月末までの休校措置がとられていますが、早く誰にも邪魔されずに子供たちが陽の光をいっぱい浴びられるようになることを切に願っています。
さて、この時期にきて日本でも新型コロナ肺炎の治療に携わる医療従事者が各メディアで取り上げられています。皆さんは、藤田医科大学の岡崎医療センターが開院前にダイアモンド・プリンセス号で発症した軽症の感染者128名を20日間にわたり受け入れたニュースをご存知ですね。国からの要請ではありますが、開院直前にこの受け入れを英断された大学側には本当に頭が下がります。結果的に院内の消毒に時間を要して各種器材の搬入が遅れたため、開院を1週間遅らせる結果になったわけですから。おそらく大学では、感染対策に知識と経験のある精鋭医師と看護師を結集してこの難題に立ち向かったものと考えられます。そしてこの目に見えないコロナウイルスとの恐怖と闘いながら、誰一人として医療者側に感染者を出すことなく、このミッションをやり遂げたのです。この中で陣頭指揮をとられたのが、守瀬善一院長です。先生は藤田医科大学で肝臓の手術を専門にされる外科の教授ですが、実は約10年間に渡り当院の木曜日の午前外来を手伝ってくださいました。私の父がまだ元気であった頃の話です。藤沢医院のスタッフは、全員が声を揃えて「あんな偉ぶらない患者さん思いの先生は見たことない」と言います。患者さんの中にはテレビで守瀬先生を見て、“藤沢医院で診てもらったことがある”と思われた方が何人もいらっしゃると思いますが、私が尊敬する先生のお一人であります。
現場でコロナウイルスと闘っている医師や看護師たちの多くは、自分の家族にうつさないために自宅に帰ることを断念して、ホテルや病院の宿舎に1人で生活することを今現在も続けています。私も2009年の新型インフルエンザで、東京の大学病院において毎日個人防護服を着ながらウイルスと闘いましたから、彼らの苦労は身に染みてわかります。考えただけで涙が出そうです。今私は東京の自宅に帰らずに数週間1人で藤沢医院にこもっておりますが、感染の恐怖と闘いながら診療している医療従事者の苦労に比べたら、こんなことは大したことではありません。私も皆さんと一緒に“ステイホーム”で頑張ります。