糖尿病
今回は東浦町の健診が終わりましたので、代表的な病気である糖尿病について書きます。
糖尿病は皆さんがご存知のとおり血糖値が高くなる病気です。日本人の主食はお米ですが、お米・パン・麺類などの炭水化物をたくさん食べると血糖値が上がります。すると体の中では、血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンですが、実際に患者さんが糖尿病を診断される10年以上も前から膵臓は頑張ってインスリンを分泌しています。そうなると膵臓が疲弊してインスリンの分泌量が減るために血糖値が下がらなくなって、糖尿病を発症するのです。私から「あなたは糖尿病の予備軍です。」と言われた患者さんがいらっしゃると思いますが、すでにこの時点から食事療法を始めないと、いざ糖尿病を発症してからでは手遅れになるのです。
では、なぜ血糖値が上がるとよくないのでしょうか?患者さんから糖尿病はどんな病気ですか?と聞かれたときに私は「体中の血管が壊れる病気です。」と答えています。でも、これもピンとこないですよね?体の中の臓器は全て血液が流れて生きています。しかし血液が流れなくなると、その臓器・細胞は死んでしまいます。つまり、血管が内側から壊れていくと、そこを修復する機能が働くのですが、これによって細い血管から詰まっていき血液が流れなくなるわけです。
糖尿病になると「目が見えなくなった。」「腎臓が悪くなって透析に通うことになった。」とか「足の感覚が麻痺して痛みを感じなくなった」と聞いたことがありませんか?目が見えなくなるのは、網膜を栄養する血管が詰まったり出血したりするからです。腎臓は、それを栄養する血管がつまっておしっこをつくり出すことができなくなるのです。足がしびれるのは、足にいく神経を栄養する血管がつまることで起きる症状です。それだけではありません。大きな血管だって詰まってきます。その代表的な病気が心筋梗塞や脳卒中です。
糖尿病が恐いのは、進行するまで自覚症状がないことです。例えば皆さんは風邪をひいたら咳が出る、のどが痛い、鼻水が出る、体がだるいなどの症状が出るから市販薬を飲んだりお医者さんに行きますよね。でも血糖値が200まで上がったからといって、大抵の人は何の症状も出ないのです。何の症状もないからお医者さんにも行かないわけです。健診結果を見て私が体重が増えているだの、お米を減らせだのあれこれお話するのは、症状が出てからでは遅いからなんです。
私が以前外科医だったのは多くの患者さんがご存知でしょうが、外科医にとってコントロール不良の糖尿病は大敵です。なぜならば、手術のときに縫い合わせた傷が治りにくかったり、化膿したりする可能性があるからなんです。これも血管が詰まって血液の流れが悪くなっていることが原因です。40歳以上であれば、いつ何時病気が見つかって手術することになるかもわからない年齢です。健診の普及により当院でも毎年10名以上の糖尿病患者さんが見つかりますが、症状が出にくい病気ほど怖いものはないのです。