藤沢医院

藤沢医院通信blog

私の心はいつも“外科医”!

私の心はいつも“外科医”!そんな気持ちを思い出させてくれる出来事に3回も遭遇しました。この通信の6月号に、内痔核に対する『ジオン注』による治療を紹介させていただきました。すでにこの治療を4名の患者さんに施行させていただいたのですが、全ての患者さんが良好な経過を辿っております。そして手術翌日に、3名の患者さんから「排便をしたときに、痔が飛び出してこなかった。とっても嬉しい。」とのお言葉を頂きました。その内の1名からは、「すごく感動した。内科の薬もここで出してもらいたいので、転院したいと思っています!」とのお言葉。涙が出そうなくらい、嬉しさがこみ上げてきました。

私が藤沢医院に帰ってきてから、既に12年が経過。それまでの22年間は、大学病院で手術と医学生・研修医の相手ばかりしてきました。高血圧も糖尿病も、2種類くらいしか薬を知らない無知な頭で戻って参りました。外来患者さんの9割が癌患者さんだった世界から、別の世界に放り込まれたような感覚を覚えました。もちろん傷の消毒や縫合は外科医の仕事の一部分ですが、心をすり減らすような緊張感と責任感を負う全身麻酔の手術をすることはもうありません。術後の回復期や退院時に、患者さんやご家族から頂いたお言葉の数々。「先生、本当に助けてくれてありがとうございました。」これほど私の心に染みわたる言葉は、ありませんでした。これがあるから、外科医を続けてこられたのです。前にも書いたことがあると思いますが、人様のお身体にメスを入れるということ。これは、私にとって責任が何倍にも増す医療行為なのです。

7月26日の新聞の一面に、こんな記事が掲載されました。『がんの手術を担う消化器外科医が、2040年の時点で約5千人不足する見込みである。このままではがん医療が継続できなくなるため、厚生労働省は医療機関の集約化を求める方針である。』私が所属しておりました日本消化器外科学会(私も当院に戻ってから退会)ですが、長時間労働で若手医師から敬遠され、この分野で活躍する専門医は年々減少傾向にあります。学会の統計によると、2000年代初頭には全国で約2万人いた外科医が、近年では1万5千人前後に減少しています。そのうち、専門的に消化器外科を担う医師はさらに限られ、地方では病院に消化器外科医が一人もいない自治体も少なくありません。少しえげつない話をしますが、手術室がフル稼働(手術が多い)している病院は経営が安定するし、閑古鳥が鳴いている病院は閉鎖あるいは縮小する必要があると言っても、過言ではありません。つまり、お薬を出すだけの治療に比べて、私が大学病院で行ってきた手術の保険点数(代金)は比較にならないくらい高額なのです。因みに、大学病院では難易度が高い手術(高額な手術)を沢山やっても、我々の給料に反映されることはありません。

 女性医師の増加が注目される中、消化器外科分野では依然として女性医師の割合が低い傾向にあります。さらに、近年の若手医師はワークライフバランスへの意識が高く、外科領域を志望する医師が減少しています。夜間・休日の緊急手術や長時間労働が敬遠される一因となっています。

 私は“昭和の外科医”です。日曜日も病院に行くのが日課、子育てを任せた妻には頭が上がりません。でも、術後の患者さんから頂く感謝のお言葉は、最高の栄養剤なのです!

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