サッカーワールドカップと箱根駅伝
カタールで開催されましたサッカーワールドカップは、36年ぶりにアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。メッシ(大会MVP)が悲願の優勝トロフィーを掲げ、準優勝でフランスのエースであるエムバペが得点王に輝く(特に決勝戦では3得点のハットトリック)など、まさに新旧のエースが活躍した大会でした。この2人は対照的です。身長が低いメッシは、少しで大きくなるために子供の頃から成長ホルモンを注射していたと聞きます。体の小ささを補うために、足元に吸いつくようなボールコントロールで、天国にいる先輩マラドーナを超越しようと練習したのでしょう。対するエムバペは、筋骨隆々で体が大きいにもかかわらず高速ドリブルで相手を置き去りするスピードスターで、太い足から放たれるシュートには相手キーパーもお手上げでしたね。
日本で私の印象に残った選手が2人います。まずは堂安選手。スペイン戦で決めた左足のシュートは、予選で100以上あったゴールの中で第2位のスピードである120km/hを超える強烈なシュートでした。どおりでスペインのゴールキーパーが枠外にはじくことができなかったわけです。日本に帰ってきた堂安選手が、「あの角度のゴールは目をつぶっても入るくらい練習した得意なコース」と話していました。次は三苫選手。「三苫の1.55mm」は有名になりましたね。スペイン戦で、ゴールラインを割ったと思われた三苫選手のキックがビデオでセーフと判定され、田中選手が押し込んだ2点目が決勝ゴールと認められた場面です。あれがなければ、日本は決勝トーナメントに進出できなかったわけですから、値千金のプレーでした。私はベスト8をかけたクロアチア戦で敗れた後に、本当に悔しそうに泣きながらインタビューに答えていた三苫選手の顔が忘れられません。彼は、これからビッグクラブに誘われて移籍すること間違いなしです。
さて、いよいよお正月の風物詩である“箱根駅伝”が迫って参りました。私のことをよくご存知の皆さんなら、1年で最も楽しみにしているスポーツイベントであることは知っていますよね。大本命の駒澤大学は、過去最強と言ってもいいくらいスキが見当たりません。対抗馬の青山学院大学は、昨年驚異的な新記録で優勝を飾りましたが、去年ほどの勢いはなさそうです。我が順天堂大学ですが、3000m障害でパリオリンピックのメダル獲得を狙う三浦選手は、夏まで海外レース転戦により駅伝モードに持ってくるまでに時間がかかりましたが、ここにきてようやく調子を上げてきました。駒澤大学に勝つ方法は1つ、“往路優勝”しかありません。1年前にも書きましたが、先頭を走ることの有利性です。まず第一に常にカメラに撮られて全国放送される、これほど選手にとってアドレナリン(活力)の出る場面はないのです。第二に風よけとなる大きな第一放送車の存在です。早稲田出身で伝説の駅伝選手だった渡辺康幸さんが解説する、あの大型車です。常に先頭を走る選手の前を走るので、後方の選手より空気抵抗が少なく省エネ走法が可能なのです。
順天堂大学の往路優勝の鍵を握る選手は、ズバリ三浦選手ではなく、5区の山登りを2年連続で担当する四釜(しかま)選手です。彼が新“山の神”となるべく先頭に立ってゴールすれば、山下りの6区を担当するであろう服部選手も自信のある区間です。先頭を走って横綱(駒澤大学)を焦らせることができれば、勝機あり。正夢になりますように。