ロッテの怪物❝佐々木朗希投手❞
今回は、ロッテの怪物“佐々木朗希投手”について書きます。なぜかと言いますと、「あんなすごい完全試合をやったんだから、先生は佐々木君のこと書くしかないでしょ!」とある患者さんから言われたからです。したがって、今回もリクエストにお応えするかたちになります。
まず、佐々木投手の出身校である岩手県立大船渡高校ですが、今から38年前の1984年に春の選抜高校野球大会で、初出場の同校が『大船渡旋風』を巻き起こしたことを、皆さんはご存知でしょうか?中国地区王者の多々良学園を初戦で完封勝利、続く日大三島に1失点完投、準々決勝で明徳義塾を完封で下して、岩手県勢初のベスト4まで快進撃を続けました。これらを一人で投げぬいたのは、左の小柄なエースである金野正志投手でした。非常に切れ味の鋭いストレートを投げるピッチャーだったことを、私は今でも鮮明に覚えています。金野投手より頭2つは大きい佐々木君ですが、彼は2年前の夏の甲子園岩手県大会において決勝戦まで進みました。しかしそこに至るまでの球数の多さから、彼が決勝戦で投げることはなく、甲子園の土を目の前にして敗れ去りました。
そしてプロ2年目の4月10日に、とんでもないことが目の前で起こりました。1994年、皆さんご存知の大府高校出身の槙原寛己投手(巨人)が達成して以来、28年ぶりの完全試合をオリックス相手に佐々木投手はやってのけました。しかも、13者連続奪三振の日本新記録と1試合19奪三振の日本タイ記録のおまけ付きです。彼がすごいのは、ご存知160㎞超の日本一のストレートなんですが、もっとすごいのは、実はボールが手から離れるまで全く同じフォームで投げる140km台のフォークボール(落ちる球)なんです。しかも受けるキャッチャーは、高卒1年目の松川君(市立和歌山高校卒)。20歳の佐々木君と18歳の松川君で成し遂げた大偉業です。
1週間後の4月17日の日本ハム戦で、もっとびっくりすることが起こりました。外出先で携帯を見た私は、『佐々木投手8回までパーフェクト!!2試合連続の完全試合か?!!』
のニュースを見て目が飛び出そうなりました。世界中の野球記録でも、全く聞いたことがないからです。さらにびっくりしたのは、球数が多くなった佐々木投手を井口監督がこの回で降板させたことです。おそらくロッテが1点でも勝ち越していれば、残りの9回を投げたのかもしれませんが、0-0の同点だったため、佐々木君の将来を考えた井口監督の大英断でした。大魔神と呼ばれて大リーグも活躍した佐々木主浩さんは、『私なら最後まで投げていた。』と話していましたが、今は時代が違うんですね。
科学的にみると、この後わずか20球多く投げただけでも、肩や肘に大きなダメージが蓄積されるそうです。球数が増加すれば筋肉への負荷は2~3倍となり、筋肉内部で小さな断裂が起きます。断裂が修復される前に投球すれば、悪化するばかりで、投手寿命を短くする結果になるのです。しかも、160km以上のストレートを投げる投手は、肘を故障した人が受けるトミー・ジョン手術を受ける可能性がかなり高いんだそうです。
大事な日本の宝ですからね、佐々木君は。
これからも、彼が起こすであろう偉業を温かく見守りましょう。