世界陸上競技選手権
今回は、世界陸上競技選手権(通称:世界陸上)で頑張った順天堂大学後輩の2人、ともに同級生で仲のいい三浦龍司選手と村竹ラシッド選手について書きます。
私のお気に入りスポーツ選手の一人、三浦龍司選手は男子3000メートル障害のスペシャリストとして知られています。数年前まで、順天堂大学の箱根駅伝エースランナーとして活躍してくれました。彼が大学1年生のときに、あの青山学院大学の原監督が、『トレードがあるんだったら、三浦君がほしい!』とテレビ中継で話したことが、忘れられません。彼は3000メートル障害の日本記録保持者であり、オリンピックや世界陸上などの国際大会でも決勝進出、上位入賞を果たしています。
三浦選手のレース展開は、序盤は集団の中で冷静に位置取りをし、中盤から終盤にかけてスパートをかけるスタイルが特徴です。今回の決勝でも、彼は忠実にプランを実行しました。残り1周で位置取りを変えて順位を上げ、最後のハードルを越える時点で、私はメダルを確信しました。が、その瞬間思わず“あっ”と声を上げてしまいました。なんと、銅メダルを獲得した17歳のケニア選手に、ハードル上で右肩を押され、飛び終わって走り始めた三浦選手の右手を後ろから引っかけた(ように見えた)のです。この一連の予想外の動作でバランスを崩した三浦君は、急激に失速して8位入賞に留まりました。レース後の彼のインタビューが潔かった。
彼は、「もう地響きのような、鼓膜が破れるんじゃないかってくらい、心の内側から震えるような歓声をいただいて。最後、惜しいところで応援に応えきれなくて凄く悔しい」とレースを回顧。ミックスゾーンでも「選手と接触して、腕ももつれてしまった」と振り返りながら言い訳せず、責任を自分で背負い込みました。翌日のテレビ出演でも「接触がなかったら、メダルが取れたんじゃないですか?」という直球質問に対して、「この競技は接触がつきものなので、それも醍醐味の1つです。」とコメント。レース後の彼は、コーチの胸で泣いた後に、痛めた足の治療で病院に向かったそうです。三浦選手、大好き!!
村竹ラシッド選手は、男子110メートルハードルの若きエースです。力強いスタートと高いハードル技術を武器に、国内大会では常に上位に名を連ねてきました。彼は、今期“12秒92”の日本新記録を引っ提げて、決勝の舞台まで進みました。結果は5位。レース後の村竹選手のインタビュー。「何が足りなかったんだろうなって。何が今まで間違っていたんだろうなって。パリ五輪が終わってからの1年間、本気でメダル取りに1年間、必死に練習して。本当に何が足りなかったんだろうなって・・・」 と人目もはばからずに涙を流して伏してしまいました。 そして、彼は「世界の舞台で自分の力を出し切ろうと挑みましたが、あと一歩届きませんでした。悔しさはありますが、ここまで支えてくれた皆さんに感謝しています。もっと強くなって、またこの舞台に戻ってきたいです。自分の脚がもつかぎり、何年かかってもメダル取りたいと、そう思いました。」と締めくくりました。人前で泣いたのは、中学生以来とのことです。これを見て、彼のまっすぐで素直な性格が伝わりました。村竹選手も大好き!
2人の順天堂大学の後輩。ともに23歳と若く、彼らの競技人生と未来は明るいと思います。次回の世界陸上とオリンピックでも、日本のメダル候補筆頭に挙げられるのは間違いないでしょう。彼らが汗を流す千葉県酒々井(しすい)町にある順天堂大学のグラウンドは、私も学生時代にラグビーで汗を流した思い出の場所なので、思い入れは半端なものではありません。
仲のいい三浦選手と村竹選手は、一緒に焼き肉を食べに行くほどの間柄だそうです。今回流した2人の悔し涙が、次回はうれし涙に変わることを期待してやみません。