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安倍内閣総理大臣の辞任

 8月29日、本日私たちの目に衝撃的なニュースが飛び込んできました。それは“安倍内閣総理大臣の辞任”でした。辞任の理由は持病である『潰瘍性大腸炎』の悪化であり、安倍総理自身も新しい薬の継続的な治療が必要であると話しておられました。総理の体調が悪いであろうことは、国民の誰の目からも明らかでした。お顔つきに生気がなく、まぶたはむくみ、私は会見を見ておりませんが時折声がかすれていたとのことです。

 さて、総理の持病である『潰瘍性大腸炎』とはどんな病気なのでしょうか?この病気は難病に指定されており、大腸に炎症が起こって潰瘍が形成される慢性炎症性腸疾患で、出血性の下痢や腹部のけいれん痛、発熱を伴う発作が起きます。この病気の原因ははっきりと分かっていませんが、遺伝と腸の過剰な免疫反応が関与していると考えられています。またどの年齢からでも起こりますが、通常は30歳未満で始まり14~24歳で発症します。安倍総理も10代で発症されたそうです。

皆さんは第一次安倍政権のことを覚えておられるでしょうか?第一次安倍内閣は2006年9月26日に発足し、小泉純一郎元首相の任期満了に伴い行われた自民党総裁選で麻生太郎氏、谷垣禎一氏を大差で破り、初の戦後生まれの首相として就任しました。発足直後は高い支持率を得ましたが、閣僚らの「政治とカネ」をめぐる不祥事や辞任が相次ぎました。安倍首相が突然の辞任を発表したのは、2007年9月12日でした。その2日前には臨時国会の所信表明演説で続投の意向を示しており、突然の辞任表明に世間は驚きました。今回も“体調管理をして、政権続投に頑張る”と表明した直後の辞任表明でしたから、前回とまさに同じです。しかも前回の会見時の顔を見ると、さすがに髪は黒いですが、まぶたのむくみや生気のなさは今回と同じなんです。前回は閣僚の不祥事、今回はコロナ感染症が引き金になって安倍総理の病気を悪化とさせた言っても過言ではありません。

実は安倍総理のお父さんである安倍晋太郎さんは、私が入局した順天堂大学第二外科で膵臓癌の手術を受けたのですが、残念ながら総理目前でお亡くなりになりました。当時の主治医が教授と私の恩師である児島邦明先生です。児島先生は安倍総理と同い年で、当時安倍外相の外遊に点滴などの医療器具を持参して同行したことを私に話してくれました。安倍総理には、慶応大学の3人の主治医が交代で外遊に付き添いいつでも緊急で診察したそうです。

よく外来で患者さんから『足がむくむ』とか『顔がむくむ』という相談を受けます。その場合に医師は、心臓や腎臓・甲状腺の機能は大丈夫か?貧血はないか?栄養状態は悪くないか?を最初に考えます。これを潰瘍性大腸炎に置き換えると、症状の悪化により大腸の炎症が悪化して血液を含む下痢が起こる。これは貧血と栄養状態の悪化に繋がります。すなわち2回の辞任劇で、安倍総理のお顔がなぜあのように見えたのか説明がつくわけです。

7年8か月という歴代総理N0.1の長期政権を全うされた安倍さん。私たちは歴史に名を残すであろう総理大臣と一緒に歩んできましたが、今はゆっくりと治療して以前のような健康を取り戻すことを強く願っております。

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